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逆引き境界短編
​「ミルクとコーヒーとトリプルイチゴと抹茶」

 大学の講義終わりに、緤と折亞、ナギはパチンコ店で仕事を終えた終夜を誘って、近くの公園に新しくできたアイス屋にやってきた。

 黒板をメニュー表にしてチョークで金額がかかれている。猫のマークが愛嬌を引き立てている。シングルは三百五十円。ダブルは五百円。それに加えてアイスの写真が貼られている。コラージュみたいなセンスに緤は好感をもった。

「どれも美味そうで悩むな……抹茶か、いやでもメロンもいいし豆乳も捨てがたい……でもここは定番のミルクか」

 メニュー表と睨めっこしていた緤は、悩んだ末、ミルクに決めた。既に選び終えていた終夜、ナギ、折亞の分もまとめて注文をして会計を済ませた。後で割り勘だ。折亞だけカップで、他はコーン。

 公園を散策するようにゆったりと並んで歩きながらアイスを食べる。ひんやりとした冷たさと、濃厚な味わいが美味だったので、緤は満足しながらコーヒーアイスも一口味わった。

 ナギは抹茶アイスを口に運ぶ。抹茶風味、ではなく抹茶の味がして濃さがちょうどよくまあ過ぎなくて最後まで飽きずに食べられるなと思っていると、隣を歩いていた折亞が

「ねぇ、ナギ。抹茶気になるんだけど一口ちょーだい?」

「あ、あぁ……いいよ」

 コーンごと差し出すと、折亞は美味しそうにぺろっと一口食べてから、折亞が選んだトリプルイチゴアイスをスプーンと共に差し出した。

 一瞬ナギは手を止めたが、受け取ってスプーンで一口分貰ってから、どのあたりにトリプルの要素があるのだろうか。産地でも混ぜているのかな、なんて思いながら食べた。抹茶の味に負けて、イチゴがあまりわからなかった。

「あ! 折亞の俺にも一口くれ! それも食べたかったんだ」

 横から緤が顔を出して、折亞のアイスをぱくりと食べた。

「ちょっと、一口って量じゃないんだけどー! 二口減ってる!」

「ミルクも美味しかったから食べてみろ。二口分いいぞ」

「んー貰う―。ミルクもいいね、シンプルで美味しい」

「だろ。にしても、四人で来るといいな。迷っても色んな味が食べられて」

「そうだね。アイス美味しいー」

 アイスを食べながらちょっと早歩きになった緤と折亞が楽しそうに並んで歩く。その背中を見てから、ナギは減ったアイスを眺める。

「何。どうしたんだ?」

 終夜はコーヒーアイスの最後のコーンを食べきってからナギへ尋ねた。

「いや、一口……」

「回し食いが嫌ならそういえばいいだろ。嫌っていったのを無理に食べたりはあいつらしないよ」

「いや、それは駄目なら駄目ってはっきりいうよ。赤の他人とかなら絶対御免だけど。友達なら別に回し食いくらい平気だし……君たちならいいし。そういう諒は? 緤に食べられてたみたいだけど」

「俺は別に食えればなんだって平気だ」

「それは範囲が広すぎ」

 ナギは呆れながら、そうじゃなくて……と続けてから言いよどんだので、終夜は察した。

「ああ。もしかして一口が異性だったから気にしていたのか」

「いや、あの……あのね」

「なんで口ごもるんだよ。乙女かよ」

「諒はなんか段々言い方が緤に似てきていないか?」

「悪口やめろ」

「仕返しだよ」

「で、答えは?」

​「ご想像通りですよ、ばーか」

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