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クロスオーバーmix短編

 ◇テイク1

 空から人が降ってきたので、色葉は見ないことにしたかった。

 普通に考えて、落下する人間を助ける方法はない。なら、無視が一番健康上、安心だ。

「あ。人間が落ちてきてる」

 なのに、隣にいたヒカゲ君が気づいてしまった。歩みも止められた。

 瞬く間に、人は地面に激突した。悲鳴を抑えて、せめて救急車と警察を呼ぼうと携帯を出すと、ヒカゲ君に手を抑えられた。

「ちょっと、ヒカゲ君。通報しなくてどうするの。事故でも他殺でも警察呼ばないと」

「僕が困る。痛い腹探られたくないし」

「いっそ捕まれ」

「人生を謳歌できないくらいなら、友達殺すけど」

 疑問形ですらない言葉。赤いリボンを付けた童顔の男には似合わない威圧感。笑顔が恐ろしい。脅迫も止めてほしい。色葉は死にたくないので、ヒカゲ君に従って通報を諦めた。

 目撃者が増える前に、離脱しようと思ったら死体が動いた。

「死ぬかと思ったデス!!」

 ピンク頭の死体が元気よく立ち上がった。死体じゃなかった。生きていた。

「いや、普通に死ぬだろ、なんで生きているの!?」

◇テイク2

 空から人が降ってきたので、色葉は見ないことにしたかった。

 しかし、何故か華麗に地面に着地した紫髪が、後から降ってきた茶髪を投げ飛ばした急展開に目を逸らせない。

 人間なのに人間らしくなくしないでほしい。

 隣にいるヒカゲ君はケラケラと笑っていた。楽しそうだな、この殺人鬼。

「今度は何が降ってくるかなー」

「マジックショーじゃないんだからやめて」

 色葉に許容できる範囲は殺人鬼の存在(死体はNG)までなので、よくわからない人たちは困る。幸いなことにそのまま彼らはどこかへ行ってしまった。もうお目にかかりたくない。

 今日は天気がいいな。

「今時の人って、空から降ってきても死なないわけ? ヒカゲ君も死なないの?」

「は? 死ぬだろ。僕は人間なんだから」

 殺人鬼にまともなことを言われて、色葉は胃が痛くなった。

 

 

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テイク1:色葉(アマービリタ)、ヒカゲ(ノワパラ)、ピンク頭=爆弾魔(逆引き)

​テイク2:色葉(アマービリタ)、ヒカゲ(ノワパラ)、紫髪=円、茶髪=斉賀(逆引き)

 

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